曲作りは、イメージすることから始まります。今回の依頼は、FM局が交通情報を伝えるときに使うBGMです。
キーワード
ひとつのプロジェクトを進めるにあたって、毎回キーワードを決めます。
曲全体の雰囲気、楽器それぞれの音色、すべてを一度キーワードに照らし合わせてみます。キーワードとマッチしないものは、すべて除外していきます。その結果、統一性のある作品が出来あがる確率は高くなります。
Bayfm Traffic Updates製作にあたっては、“軽快”という言葉をキーワードに決めました。
都会に交通渋滞はつきものです。どこそこが渋滞していますという情報が、ほぼ間違いなくBGMをバックに伝えられます。
せめて音楽だけでも、軽快にスイスイ流れている感じに作ろうと、まずは考えました。渋滞でイライラしている多くの人の心の負担を、少しでも音楽で軽くできたらという願いも込められています。
全体から部分へ
作曲は、全体から部分へという流れで進めます。
まずは、曲全体を支配するリズム、グルーブ感を考えることからイメージを膨らませていきます。今回は、軽快な16ビート、サンバを思い起こすようなリズムを使うことにしました。
曲全体を支配するリズムが決まったところで、曲を構成する部分を考えます。
Traffic Updatesは、大きく分けると2つの部分から構成されています。アメリカでは“ショットガン”と呼ばれている、
・頭の短いヴォーカル・ロゴ(♪Bayfm Traffic Updates )2小節の部分と、
・その後のBGM、32小節の部分です。
どちらが先に出来たかという記憶は、残念ながらありません。しかし、ヴォーカル・ロゴからBGMへ、いかにスムーズに音楽の流れを作るかというポイントにはかなり気を使いました。
型(フォーム)、形式
曲作りにおいて、型(フォーム)、形式は重要な要素です。コマーシャル、映画音楽、ポップス、音楽がどのような状況で使われるかによって、楽曲の型は変わります。
型とは8小節の小さな単位を、どのように組み合わせてワン・コーラスに仕上げるかという、曲作りのテンプレートのようなものと考えていいのかもしれません。
世の中には、さまざまな型で作られた楽曲があります。普段なにげなく音楽に接するとき、曲のフォームを考えながら聴いてみるのもまた一味違った楽しみ方かもしれません。
今回のプロジェクトには、J-POPでよく使われている、
・出だし → ブリッジ → サビ、
という型は残念ながら使えません。理由は、サビにたどり着くまでに時間がかかってしまうためです。
交通情報は、それこそ30秒で終わってしまう場合もあります。出だし = 楽曲の顔、というフォームが理想です。
結果として、A-B-A-B’、という型に決めました。